キュレーターズノート
MIMOCA'S EYE vol.2 小金沢健人 展「動物的」/やなぎみわ 婆々娘々!
植松由佳(国立国際美術館)
2009年02月15日号
小金沢と言えばかつての「スタジオ食堂」のメンバーでもあり、その先鋭な映像感覚やパフォーマンス、ドローイング、インスタレーション作品でよく知られているが、資生堂ギャラリーでの個展や横浜トリエンナーレをはじめ、昨年秋に開催された神奈川県民ホールギャラリーの個展「あれ と これ の あいだ」が印象に残る方も多いだろう。
その神奈川に続くように始まったMIMIOCAでの個展。個展に先立って小金沢は丸亀に滞在し、出品作品のほとんどを現地で制作している。メインの展示スペースは前述の2階スペースだが、作品は美術館1階のエントランス部分から始まり、2階そして3階へと続く吹き抜けの壁面に、滞在制作された映像やドローイング、インスタレーション作品が効果的に展示されていた。メインとなる作品は、2階展示室のある一壁面いっぱいに丸亀市民から提供を受けたモニターが用いられた《無焦点世界》と、またもう一面の無数の蛍光灯によって埋め尽くされた《電流の繁殖》の2点である。いずれもが小金沢の特徴でもある身近なものを素材としての作品なのだが、《無焦点世界》では、もはや不要のものとして提供を受け素材として用いられることとなった数々のブラウン管モニター40台が並ぶ。その1台1台があたかも個性を持つかのようにそれぞれ別のパターン(40種)で移り変わる色とりどりの画面を見せ、テレビから発せられる正弦波の音が空間に響き渡る。223本の蛍光灯が用いられた後者の光のインスタレーションでは、一本一本の蛍光灯が数分間隔で点滅を繰り返し、やがて増殖するかのようにすべての蛍光灯に明かりがともり次の瞬間一斉に消灯し、会場の照度も落ちる。展示室に身をおきながら、「個」と「群れ」という関係性、また宮島達男作品との類似性も語ることのできるような生と死について思いを抱かせる作品である。また視覚や聴覚といった人間の根源的な感覚に訴えかける作品により、人間が非常に動物的な存在であるということを、展示を鑑賞しながらふと感じた。
小金沢はインドやギリシャなど近年、その場所にとどまりそこで入手したもの(素材そして経験)から制作することを積極的に行なっているが、丸亀でもその成果が展示として結実していた。企画者である中田耕市学芸員も語っているが、展示空間を把握し作品の制作と展示を行なったことで空間をうまく作品にとりこんだ展覧会になったと言えよう。その特徴のひとつでもある作品の照度の変化を楽しむためにも夕刻の時間帯に鑑賞することをお勧めしたい。
MIMOCA'S EYE vol.2 小金沢健人 展「動物的」
会場:丸亀市猪熊弦一郎現代美術館 展示室B
香川県丸亀市浜町80-1/Tel.0877-24-7755
会期:2009年1月18日(日)〜4月5日(日)