アート・アーカイブ探求

中村芳中《白梅図》心が癒される“かわいい琳派”──「福井麻純」

影山幸一

2013年11月15日号



中村芳中《白梅図》江戸時代・文化年間(1804-1818)頃, 紙本着色一幅, 134.5×66.5cm, 千葉市美術館蔵
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おかしみの背景

 寒さのなかで凛と香気が高い花を咲かせる梅の木。そんな健気な梅をほんわかと描いた絵に出会った。そのユーモラスな形態は、現代のヘタウマのイラスト画か絵手紙ではないかとしばらく思っていた。実物は掛軸であると気付き調べてみると、200年前の琳派の作品という。琳派の系譜としてなじみの薄い中村芳中(ほうちゅう)の《白梅図》(千葉市美術館蔵)であった。素朴な画風なのに瑞々しい生命感を感じさせる。なぜ、どこが琳派なのか。またこのおかしみはどこからくるのだろう。
 中村芳中を研究している京都の細見美術館の主任学芸員、福井麻純氏(以下、福井氏)に不思議な魅力のある《白梅図》の見方と、芳中について話を伺いたいと思った。福井氏は「中村芳中とその時代」(『美学』2002.3.31)や「中村芳中の扇面画の調査研究」(『鹿島美術研究(年報第29号別冊)』2012.11.15)などの論文を発表し、琳派の展覧会企画も行なっている。東京から新幹線で日帰りの京都へ、平安神宮に近い細見美術館へ向かった。


福井麻純氏

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