デジタルアーカイブスタディ

「Google Art Project」世界とつながっているアート
──グーグル 村井説人

影山幸一

2012年05月15日号


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Google Art Projectインタビュー

 1998年に創業した、米国カリフォルニア州に本拠地を置くグローバルなIT企業Google(CEO:ラリー・ペイジ)が、「Art Project第1弾を公開したのは2011年2月だった。Webサイトでいつでも美術館内を歩いているように移動しながら作品を見ることや、作品に近づき細部まで鑑賞することなどができる「Art Project」。そのプロジェクトに参加した美術館は、ニューヨーク近代美術館、ロンドンのナショナルギャラリーなど9カ国17館、作品約1,000件であった。CGを使ったバーチャルミュージアムは珍しくないが、ストリートビューで実在する美術館内を自由に動けるのが新鮮だった。2009年に公開された「World Digital Library」に続いて、ミュージアムも世界を俯瞰しながら作品鑑賞できる時代に入ったと思った。
 ストリートビューのカメラを三輪車に乗せて人力でこぎながら美術館内を撮影しているユニークな「Art Project」の取材風景をインターネットで発見し、早速取材を依頼したが、発表からすでに半年が経過しており、次回の発表まで待つこととなった。それから7カ月、2012年4月9日に発表された「Art Project」第2弾に参加した館の代表者が東京国立博物館に集まり記念式典を行なった(写真参照)。今回は第1弾と合せて40カ国151館、約30,000件と美術館数も作品数も一気に増え、さながら世界の有名美術館が「Art Project」に一堂に会した感がある。特に日本の美術館★1が今回参加したことは、国内の美術関係者やデジタルアーカイブ関係者にとっても刺激的なことである。国内で進めている日本美術作品の画像アーカイブ事業である「文化遺産オンライン」や「e国宝」なども世界へインパクトを与えられるかどうか、今後の推移が注目されている。Google社の実行力には驚くばかりでなく、インターネットというメディアのもつ世界観とスピード感を再認識することになった。
 「Art Project」の目的は、“文化や芸術に対する関心” “作品に触れる機会” “人類の知を共有し、未来に継承”の3点であるというGoogle社に、「Art Project」誕生の意義や、作品をデジタル化する手順や方法など、デジタルアーカイブに関連する事項を伺ってみたいと思った。今回、グーグル株式会社 戦略事業開発本部ストラテジックパートナーデベロップメントマネージャーの村井説人(せつと)氏、広報部マネージャーの富永紗くら氏が対応してくれた。躍進する新しい時代のセンスを感じるIT企業が実践するデジタルアーカイブ事業から学ぶ点は多い。ほぼ毎日アクセスしているインターネット内のGoogle、実際に東京・六本木ヒルズにあるGoogle社を訪ねるというのは、バーチャルが実現化していくような不思議な体感であった。

★1──足立美術館(島根県)、大原美術館(岡山県)、国立西洋美術館(以下、東京都)、サントリー美術館、東京国立博物館、ブリジストン美術館の6館、合計567件(芸術家309名)の作品。



村井説人氏

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    ──グーグル 村井説人