[韓国、大邱]

大邱の中心部をまわった後、郊外の各地をめぐる。

空港に向かう途中の北部にある慶北大学校はキャンパスがとにかく広大で、しかも起伏に富むため、散策するだけで足腰が鍛えられる。スタジアムなどの運動施設も充実し、市民に開放されていた。ポストモダンの校舎や学生寮などは凡庸だったが、今回、大邱を案内してくれたランドスケープ・デザイン研究室ののジョン先生(Tae-Yeol Jung)のフロアや、低層に抑えた建築学科はほかの校舎と比べてやはりカッコいい。

慶北大学校

西方にあるハニ・ラシッドが設計した《The ARC》(2012)は、水をテーマとする川沿いの文化館である。遠くからも目立つ、両端が跳ね上がるような弧(ARC)を描くオブジェ的な造形は、魚や波紋などのイメージから着想を得たとされるが、ARK(方舟)も連想させるだろう。1階の常設展示の椅子や什器などのインテリアは、彼らしい未来的なデザインの仕上がりだが、上部の展示空間はだいぶ粗く、映像のコンテンツもいまいちだった。週末ゆえか、まわりでピクニックする人たちがいた。

《The ARC》(2012)

今度は西から東へ、大邱の反対側に移動し、運動と文化施設のエリアを見学した。大邱サムスン・ライオンズ・パークのスタジアム(2016)の最寄りの地下鉄駅には、なんと改札の前にバッティング・センターがある。その日は試合が開催されるため、大勢の人が集結していたが、日本の野球場に比べて、若者が多いように思われた。ほかにも大邱ではこれまで国際的なスポーツ大会が行なわれてきたため、ダイナミックな巨大施設が整備されている。例えば、世界陸上選手権大会に合わせて建設された屋内型の《陸上振興センター》(2011)、日韓で開催された2002年のワールドカップで使われたスタジアムと商業施設《カラースクエア》(2002)などだ。

大邱サムスン・ライオンズ・パーク

街を見渡す丘の上の《大邱美術館》(2010)も大きな空間をもつ。ただし、訪問時は一部の展示室しか現代美術の展示に活用されていなかった。全体としては、磯崎新の《群馬県立近代美術館》(1974)風のフレームを強調した幾何学的なデザインである。ここも日本の美術館に比べて、若者の来場者が多い。入場料がかなり安く抑えられていることも、一因かもしれない。

《大邱美術館》(2010)

これに隣接する《大邱潤松美術館》は、ほぼ完成していたが、オープン間近だったため、外観のみを見学した。傾斜地を生かした空間構成をもち、高さのレベルによって素材を大胆に変えている。おそらく、上からアプローチするのだろうが、下からアクセスすると、いきなり事務方のボリュームが出迎えるのは味気ない。


《大邱潤松美術館》


関連レビュー

大邱の近代建築|五十嵐太郎:artscapeレビュー(2024年5月10日)

鑑賞日:2024/03/30(土)