会期:2024/04/17〜2024/05/05
会場:代官山ヒルサイドフォーラム[東京都]
公式サイト:https://hillsideterrace.com/events/14224/

マイケル・ケンナが初来日したのは1987年だった。どうやらそのとき、まるで魔法にかかったように、彼のなかに日本を撮り続けたいという気持ちが湧きあがったに違いない。以後、何度となく来日して日本各地を撮影し、写真集の刊行、写真展の開催などの活動を続けてきた。今回の代官山ヒルサイドフォーラムでの展覧会は、それらの写真を集成した写真集『JAPAN: A LOVE STORY』(Nazraeli Press)の刊行に合わせて開催されたもので、近作を含む日本の写真の代表作、100点あまりが出品されていた。

ケンナが日本に魅せられたのは、現在はアメリカ西海岸に住んでいるが、イギリス・ランカシャー州生まれの彼にとっての原風景を、日本に見出したためではないだろうか。イギリスの四季の移り変わり、海、山、森、田園風景などが複雑に入り組んだ風土と、日本のそれとの共通性を感じたということだ。さらに、彼の主に6×6判のモノクローム・プリントで発表される、余分な要素を削ぎ落とした簡潔でミニマルな風景写真の被写体として、日本各地の眺めがぴったりしていたということもありそうだ。特に、冬季には雪に覆われる北海道の風景は、彼に大きなインスピレーションを与えたようで、印象深い作品を何点も見ることができた。

ケンナの、ときに俳句を思わせるミニマリズムの美学は、日本の観客にも馴染みやすいのではないのだろうか。今回、彼の作品をまとめて見て、山陰地方、特に鳥取砂丘などを舞台にした植田正治の風景写真との共通性を強く感じた。二人の写真を並べた展覧会を企画するのも面白そうだ。

鑑賞日:2024/04/16(火)(内覧会)