発行所:平凡社
発行日:2024/02/26
公式サイト:https://www.heibonsha.co.jp/book/b639160.html
2021年に逝去した金子隆一は、東京都写真美術館専門調査員として活動しながら、日本写真史の分野で多大な業績を残した。一方で国内外の写真集、写真関係図書のコレクターとしても知られ、その蔵書は2万冊以上に及んでいた。すでにそのコレクションをもとにしたアイヴァン・ヴァルタニアンとの共著『日本写真集史 1956−1986』(赤々舎、2009)が刊行されているが、写真集と同様に独自の展開をしてきた日本の写真雑誌を跡づける試みが、大きな課題として残っていた。その生前から、膨大な写真雑誌の蔵書を整理し、再構築する作業を続けていたのだが、残念なことに志半ばにして亡くなる。本書はその後をアイヴァン・ヴァルタニアンと戸田昌子が引き継いで、2022年に英文の『Japanese Photography Magazines 1880s to 1980s』(Goliga Books)として刊行した著書の日本語版である。
「第1部 近代化時代の芸術写真」「第2部 新たな国の新たな写真」「第3部 マスメディア時代における写真」の3部構成、全部で8つの章、24のセクションに分類された本書全体の構想には、金子の写真史家としての知見の厚みが隅々まで反映しており、豊富な図版とともに見応えのある内容になっている。写真雑誌は写真家たちの作品の重要な発表の場であるとともに、それぞれの時代相を映し出す鏡であったことが、本書のページを繰るうちにいきいきと伝わってきた。解説、資料も充実しており、明治期から1980年代に至る日本写真史を辿るうえで、必読の文献となることは間違いないだろう。
執筆日:2024/05/03(金)