会期:2024/06/01~2024/08/25
会場:東京都庭園美術館[東京都]
公式サイト:https://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/240601-0825_yumeji/
生誕140年を迎えた竹久夢二の最新研究に基づく回顧展が、東京都庭園美術館で開催された。同館が朝香宮邸だった頃、主人である鳩彦王殿下の息女、湛子女王が自室に夢二の色紙や短冊を飾っていたというエピソードがあるほど、ここは当時の暮らしを物語る意味でも、ふさわしい場所である。夢二と言えば、あの叙情的な美人画を思い浮かべるが、本展ではさらに初公開となる作品や資料が多々お目見えする。長らく所在不明とされてきた《アマリリス》をはじめ、渡米中に描かれた《西海岸の裸婦》や風景画などの貴重な油彩画が多数展示されていた。さらに晩年、外遊先の欧米各地で描き留めたというスケッチブックも公開されており、美人画ももちろんあるが、それだけではない、夢二の新たな側面を垣間見ることができた。
《アマリリス》(1919[大正8]頃)、油彩・カンヴァス、夢二郷土美術館蔵
《憩い(女)》(昭和初期)、絹本着色、夢二郷土美術館蔵
《西海岸の裸婦》(1931-32[昭和6-7])、油彩・カンヴァス、夢二郷土美術館蔵
それにしても、なぜ、夢二は永遠にもてはやされるのか。江戸時代の浮世絵にも美人画のジャンルはあったが、やはり夢二は近代の世俗的な美人画家であることが大きいのだろう。本や雑誌の装丁、衣服や雑貨などのデザインを手掛けたグラフィックデザイナーの草分けかつ詩人で、日本で取り入れられたばかりの油彩画家としても活躍したことから、夢二は時代の先端をいくマルチクリエイターだったと言われるが、後世の我々が注目するのはやはり美人画だ。明治、大正、昭和初期と日本が近代化へ突き進んだ時代に、その世相を反映したかのような、ハイカラなのにどこか憂いのある表情を湛えた美人画だったからこそ、我々は心惹かれるのである。おそらく後にも先にも、これほど激動の時代はない。だからこそ時代の写し鏡として見ても貴重なのだ。
ところで美人画というジャンル自体、近年、ルッキズムが社会問題化していることを考えると、将来的には消えていく可能性が高い。となると「夢二式」美人画は、日本での最後の美人画として位置付けられるのかもしれない。
鑑賞日:2024/07/31(水)