会期:2024/10/05~2024/12/22
会場:藤沢市アートスペース[神奈川県]
公式サイト:https://www.city.fujisawa.kanagawa.jp/bunka/FAS/exhibition/ex070/index.html

ファッションを軸にプロダクト、グラフィック、サウンド、映像などカテゴリーに捉われない横断的なデザイン活動を行なっている、クリエイティブディレクター・デザイナーの廣川玉枝。本展は、彼女の独自ブランド「SOMARTA」のシグニチャーアイテムである「スキンシリーズ」の思考をたどる内容だった。

展示風景 藤沢市アートスペース

タイトルとなっている「皮膚のデザイン」とは何なのか。それは人間が生まれ持った皮膚を「第一の皮膚」と捉えるところから始まる。彼女はその皮膚に最も近い存在の衣服を「第二の皮膚」とし、「スキンシリーズ」のコンセプトを打ち立てた。なぜ、衣服が皮膚でなければならないのか。古今東西には、祭祀や儀式、あるいはファッションのためにボディペイントやタトゥ、刺青など、皮膚に装飾を施す文化がある。いずれもその身体表現には特別な思いや願いが込められており、また超越した美しさを得るための「身体の夢」が現れていると説く。つまり「第二の皮膚」は、そんな「身体の夢」を何度でも叶えることのできるツールになるという解釈だ。

素材のイメージとしては、平たく言えばタイツに近いのだが、「スキンシリーズ」は無縫製ニットであるのが特徴で、首から手足、足先までを柔らかくすっぽりと包む。また何といっても流麗な幾何学模様や唐草模様、鮮やかなカラーが目を引き、まさに未来の身体表現という印象を抱かせる。しかし彼女の思考はそれだけに留まらない。皮膚の概念を大きく広げ、全ての物事を骨格、内臓、皮膚という人間の構造に喩えて、人間を取り囲む環境も、衣服の延長線上にあると考えたのだ。つまり身体と密着する椅子などの家具、車などのモビリティーを「第三の皮膚」、さらに家などの建築物やその空間を「第四の皮膚」、そして地球そのものを「第五の皮膚」というように…。衣服から出発し、ここまで思考を広げられるとは驚いた。彼女は俯瞰力にとても長けたクリエイターなのだろう。皮膚という視点で世の中を見つめると、人類は一つになれるのかもしれない。世界情勢が危うい今だからこそ、こうした新たな視点を持つことの重要性を思い知った。

展示風景 藤沢市アートスペース

鑑賞日:2024/10/27(日)