会期:2024/10/01〜2024/12/22
会場:東京国立近代美術館[東京都]
公式サイト:https://haniwadogu-kindai.jp
大変興味深い展覧会だった。近年、縄文土器ブームともいえるほど、火焔型土器や《遮光器土偶》などの土偶が注目を集めているが、それにより縄文vs弥生といった二項対立が働いて、弥生時代以降の古墳時代に作られたハニワは造形的に「なんとなく面白くないよね」という雰囲気に包まれているところがあった。本展はその点から切り込んでいくのだが、ハニワに関して、私は何も知らなかったことを思い知らされたのである。
展示風景 東京国立近代美術館
まず、明治から昭和初期にかけて日本が近代国家を築いていくなかで、ハニワは万世一系の象徴として特別な意味を持つようになったという歴史に慄いた。ひいては素朴な顔のハニワは日本人の理想とされ、戦意高揚や軍国教育にも使役されたのだという。単なる愛好や考古学とは全く異なる視点、つまり国策のためにハニワが利用されたという事実は、日本人として心して知るべきことだと感じた。また戦後の高度経済成長期には復興と開発のために日本中の土が掘り返され、歴史の読み換えがされていくものの、冒頭で述べた縄文vs弥生の二項対立が伝統論争として起きてしまう。そのきっかけをもたらしたのは岡本太郎の著述であることは、私も知っていた。そして現代になると、SFやオカルトブーム、特撮やマンガなどの分野にキャラクターとして登場するなど、ハニワはサブカルチャー化していく。その代表ともいえるのがNHKの子ども向け番組「おーい!はに丸」で、放送されたのが1980年代とはいえ、私にとっては記憶にまだ新しい。このように近代以降の流れを見ていくと、時代に翻弄され、ハニワの立場はずいぶん揺らいできたことが分かる。言い換えれば、それほどハニワは日本人にとって特別な存在だったのだ。
都路華香《埴輪》(1916) 京都国立近代美術館
斎藤清《ハニワ》(1953) 福島県立美術館 [© Hisako Watanabe]
NHK教育番組「おーい!はに丸」1983-1989年放送
左:ひんべえ 右:はに丸(1983) 劇団カッパ座
そもそもハニワとは王の墓である古墳に並べられた素焼きの造形物である。それは当時の人間社会を写し出したものであったため、日本人にとって切っても切れない存在であるのは当然なのだ。本展を観終えて、今後もう、縄文vs弥生だけでハニワを語らないようにしようと心に決めたのだった。
鑑賞日:2024/11/29(金)