会期:2025/07/04~2025/11/03
会場:21_21 DESIGN SIGHT[東京都]
公式サイト:https://www.2121designsight.jp/program/bosai/exhibits.html

近年を振り返ると、日本人の防災意識は1995年の阪神・淡路大震災と、2011年の東日本大震災を機に一気に高まったような気がする。しかし喉元過ぎれば熱さを忘れるではないが、大きな震災のない日々がしばらく続くと意識はまた薄れていってしまう。かくいう私もそのとおりで、半年前、引っ越しの荷造りをした際、納戸の奥から十数年前に購入した消費期限切れの備蓄水が出てきて唖然としてしまった。当時、同時に用意した防災リュックも納戸の奥に紛れ込んでしまっており、機能不全に陥っていたことを反省したのである。そのため、新居に移ってから新たな備蓄水や食品、簡易トイレ、リュックなどの防災グッズをそろえ直した。自分の身に迫る何かのきっかけがなければ、防災対策はなかなかできないということを思い知ったのである。

9月1日の「防災の日」をまたぐ本展は、来場者の防災意識に働きかけることを狙いとしているようだ。21_21 DESIGN SIGHTでの企画展は、大きなテーマの下、参加作家による作品が並ぶのが常である。今回もそのスタイルを取ってはいるのだが、まるでメイン展示のように会場を占めていたのが10の「問い」だった。しかも「『安全な場所』って、どこ?」「十分な備えって、どのくらい?」「『そのとき』は、いつやってくる?」など、なかなかすぐには答えづらい問いばかりだったのである。会場内のデバイスや自分のスマホから特設サイトにアクセスして回答するようになっており、これまでに集まった来場者からの回答を映像作品として映し出していた。つまり問いに対する答えを考えることで、否が応でも自分なりの防災対策を考えざるを得ない仕掛けとなっていたのだ。

会場風景 21_21 DESIGN SIGHTギャラリー2[撮影:木奥恵三]

会場風景 21_21 DESIGN SIGHTロビー[撮影:木奥恵三]

会場風景 21_21 DESIGN SIGHTギャラリー2 WOW「みんなは、どうする?」[撮影:木奥恵三]

そのようにあまり気楽な気持ちでは観られない内容ながら、少し癒されたのが地域のさまざまな伝承を列挙してテキストやイラスト、歌にした作品「ヘビが木にのぼると」である。かつて人々は自然現象や身近な野生動物の習性を見て天気や災害を予測した。占いめいたものも多いが、それらは科学が発達する前、人々が暮らしを守るために唯一拠り所としたものだった。レベルの差こそあれ、人々の防災意識は太古より変わらずあったことを物語る。災害予測や対策は時代とともにどんどん先鋭化し確度を高めている。それによって助かる命が増えていることを改めて認識したい。

鑑賞日:2025/07/27(日)