会期:2025/07/24~2025/10/19
会場:TOTOギャラリー・間[東京都]
公式サイト:https://jp.toto.com/gallerma/ex250724/top/

6月下旬、2日間半かけて大阪・関西万博に行ってきたのだが、正直、人気パビリオンの予約取得合戦に明け暮れてしまい、周りの環境をゆっくりと眺める余裕があまりなかった。本展を観て、その点をとても悔やんだ。実は万博が開催される3年前の2022年、休憩所やトイレなど20施設について、設計業務を担う若手建築家を選定する公募型プロポーザルが行なわれていたという。審査員は会場デザインプロデューサーを務めた藤本壮介らである。ユニークなのは公募参加資格のひとつに、1980年1月1日以降生まれであることを掲げていたことだ。今後の活躍が期待される若手建築家に意欲的かつ大胆な提案をしてもらい、魅力的な施設を創出することをその目的として謳っているが、きっと応援の意味も込められていたのだろう。若手に限らず、建築家にとって公募型プロポーザルは大きな仕事を得るための手段になると同時に、自らの実力を試し、また世間へアピールする場ともなる。そうした貴重な機会を若手に限定して設けたことは、高く評価したいと思った。

本展は、同プロポーザルで選定された20組の若手建築家とその作品を紹介するものだった。「つくることを主体的に考える」など7つのキーワードを軸に、自身の思想や構想、プロセス、模型、モックアップなどが展示されていた。いずれも万博会場のための施設であるが、それにとどまらない提案を行なっていたのが特筆すべき点である。タイトルにも示されているとおり、彼らは作り手としても、使い手としても、今の時代における「建築の当事者であること」を念頭に置いて向き合ったという。つまり万博という機会を逆に利用し、既存の枠組みや制約を超えて、これまでにない素材や技術などを扱う道筋を立てることに挑んだのである。そもそも万博は未来の社会実験の場でもあるのだから、そのくらいのチャレンジをしなければ意味がないと思う。

それにしても、20施設の写真を観て、私の記憶にあったのは2〜3くらいだったというのが情けない。できれば、もう一度、万博会場に行って確かめたい気分になった。開幕前は悪い噂ばかりが飛び込んできた万博であるが、未来の建築への布石がこんな風に仕掛けられていたことを、今、新鮮な気持ちで受け止めている。

展示風景 TOTOギャラリー・間 GALLERY 1[©Nacása & Partners Inc.]

展示風景 TOTOギャラリー・間 COURTYARD[©Nacása & Partners Inc.]

展示風景 TOTOギャラリー・間 GALLERY 2[©Nacása & Partners Inc.]

鑑賞日:2025/08/31(日)