
会期:2025/08/19~2025/12/28
会場:生活工房ギャラリー[東京都]
公式サイト:https://www.setagaya-ldc.net/program/615/
戦後80年の節目を迎えることから、今年は多くの媒体や施設で先の戦争を振り返る企画が催されてきた。その切り口はさまざまであるが、本展は子どもに視座を置いた内容という点でなかなかユニークだった。確かにいつの時代にも子どもは社会のなかで育つ。したがって戦争という有事が成育環境に大きな影響を与えるという意味で、子どもは最大の被害者であるのかもしれない。日本は明治中期から隣国と戦争を始めた歴史を持つが、国内が戦争一色に染まり、庶民の暮らしに色濃く影響を与えるようになるのは昭和初期である。知られているように、学校教育においても軍国主義的な色彩を帯びたことから、大量の軍国少年・少女が生まれていった。そうした負の時代から目を逸らすことなく、戦前・戦中・戦後を通して、子どもの玩具や雑誌、文具などをずらりと展示したのが本展である。

展示風景 生活工房ギャラリー[写真:高見知香]

展示風景 生活工房ギャラリー[写真:高見知香]
展示品のなかでも印象的だったのはすごろくだ。あるひとつのテーマを設け、ストーリー仕立てにして、絵と文字でスタートからゴールまで誘導していくこの手の玩具は、教育やプロパガンダにうってつけであることに改めて気がついた。大正時代には礼儀正しく、心身ともに健康で、家の手伝いも学校の勉強も毎日積極的に行なうといった模範生を描いたすごろくが流通するが、昭和初期にはまさに戦意高揚をかき立てる物々しいすごろくが出回ったようで、その描かれた内容のすさまじさに空恐ろしくなった。何事も吸収しやすい子どもへのその影響力たるや……。しかし戦後の高度経済成長期は一変して社会が平和主義に傾き、すごろくも温かく夢のある内容に変わっていく。また『鉄腕アトム』『月光仮面』『鉄人28号』といった漫画やアニメが台頭し、子どもたちを夢中にさせるヒーローが続々登場した。おそらく戦中での子どもたちのヒーローは「兵隊さん」だったのだろう。幼い子どもがどんなことに心を奪われやすいのかといった心理を巧みに突き、それを利用して軍国教育を行なった戦中の日本社会は、やはり罪が深いと思わざるを得ない。

展示風景 生活工房ギャラリー[写真:高見知香]

展示風景 生活工房ギャラリー[写真:高見知香]
鑑賞日:2025/11/01(土)