長野県立美術館からの風景

1月、見たい、見なければと思っていた展覧会が次々と会期を終える。「会期の始めに見ておけよ」「そうなんだけど、ずっと予定がたてこんじゃってて、まるで余裕なかったんです」と独りで言い訳。そういうわけで、現在、拠点としている関西から東京+長野の日帰り弾丸ツアーをやってみました。朝7時過ぎ、京都発の新幹線に乗り、20時東京発の新幹線に乗って戻ってこれました。スケジュールを組む前に、念のため「巡回しませんか?」と各館に電話を入れてみましたが、「その予定はありません」という答えが返ってきました。「じゃあ、やっぱりやっぱり行くしかないわね」

まずは、アーティゾン美術館ジャム・セッション 石橋財団コレクション×山城知佳子×志賀理江子 漂着」。新幹線が積雪のために少し遅れて、京橋に着いたのが10時20分頃。山城さんの作品だけでも見るのに2時間はかかると聞いていましたが、実際は3時間くらいかかりました。最終日ということもあってか、みるみる会場は人でぎっしり。マルチスクリーンの新作映像インスタレーション《Recalling(s)》は、戦争体験を語るシーンと劇場やライブのシーンが交差する複雑な構成になっています(隣のスクリーンの音声がもれ聞こえてくるが、わざと同期して聞かせている)。ドキュメンタリーとフィクションが複雑に入り混じる、この手法こそが報道ではなくアートがもちうる手段なのだと思いながら、気がついたら、予定の13時をはるかに過ぎている! あわてて志賀さんの展示を見て(展示空間そのものが写真! で、そのなかのテキストを読んでいく)、東京駅へ。

新幹線に乗って、雪で白くなった街に着いたのは15時過ぎ。澄んだ空気がツンと凍っていて気持ちがいい。タクシーで長野県立美術館北島敬三写真展 借りた場所、借りた時間」へ。これは初期の熱いスナップショットから現在のソリッドで硬派な写真まで、その50年の軌跡を振り返る大規模な回顧展。木村伊兵衛賞と土門拳賞という、性質の異なる大きな賞をふたつとも受賞しているのは北島さんだけです。《PORTRAIT》で始まり、《Untitled Records》で締まる展覧会を見ると、写真家の経歴のなかでの大きな方向転換が、違和感なくというか、必然のように一本の筋がとおっていて、さらにいま現在の仕事が一番冴えて見えるという見事な構成でした。これまで見る機会が少なかった「沖縄」のシリーズが見れたのも行った甲斐がありました。

「北島敬三写真展 借りた場所、借りた時間」会場風景 長野県立美術館

『日本カメラ』に連載されていたときのテキストを読んでるうちに閉館時間になり、美術館からはバスに乗り、駅の近くの戸隠そばの開店時間にちょうど間に合って、天ぷらそばをかき込んで、また新幹線に飛び乗ったのでした。

国際的に活躍されている某有名建築家のドバイでの打ち合わせが日帰りだったという話を聞いたことがあります。日帰りといっても24時間ではないとは思いますが、そんなのに比べたら、こんなのヘでもないですよね。(f)