公式サイト:https://waymo.com/intl/jp/

サンフランシスコ全域で運行する自律走行配車サービス「Waymo One」に試乗した★1。Googleの親会社Alphabet傘下のWaymoが提供するこの完全自動運転タクシーは、プロジェクト発足から15年を経て、サンフランシスコやロサンゼルス等で本格的な試験運行・実装が行なわれている。広大なグリッド状の道路から急勾配、複雑に入り組んだ街路まで、人間にとってすら難解なルートを有する同エリアにおいて、人間による運転より低い事故率を保持しているという事実は、アルゴリズムによる都市交通の変容を予感させる。


Waymo車内[筆者撮影]

専用アプリで配車した車両に乗り込むと、解錠から目的地への移動まで、すべてがアプリケーション上の操作だけで完結する。車両が自律動作する仕組みは、車両のルーフトップに設置されたLiDAR(レーザー光による環境センサー)、車体の四隅を囲う29個ものカメラ、前方のミリ周波数レーダーによるセンシング技術などの情報を、車両に搭載されたコンピュータによってリアルタイム処理するというものだ。車両センサーから収集した物理的な都市空間のデータに加え、シミュレーション走行で培われた行動予測モデルが、信号や歩行者、対向車の動きを絶えず解析し続けている。


WaymoのUI[筆者撮影]

実際に乗車して感銘を受けるのは、その挙動が極めて滑らかであり、ある種の退屈さすら伴うほどストレスがない点だ。危険な挙動は一切なく、対向車や歩行者の動きをミリ単位で計算し制限速度を厳守しながら躊躇なく進んでいく。後部座席のディスプレイには、車両が認識している周囲の状況がリアルタイムで3Dレンダリングされ、窓の外の風景がゲームのように没入的に描かれ、計算可能なオブジェクトへと還元されていく様子が可視化される。かつて星新一がショートショート『小さな世界』★2で描いた、すべてが揃う快適な車とは異なる未来にある、機械的な演算によって最適化され、都市交通のノイズを取り除いた摩擦のない移動体験であった。

興味深いのはカリフォルニアをはじめとする西海岸において、その土地独自の法的整備や社会課題と機械技術の発展が深く接続されている点にある。同州では2035年までに新車販売の100%をゼロエミッション車(ZEV)とする規則が進行しており★3、クリーン車両への優遇措置も段階的に厳格化されている。Waymoも初期構想のミニバンから現在の電気自動車へと車両を切り替えた背景には、強力な法的権限を持つ州の環境政策に対しインフラの一部として同期するための生存戦略が見える。

また、2名または3名以上が乗車する相乗り車両のみが通過できるHOVレーン(相乗り優先車線)の制度厳格化★4など渋滞緩和やサスティナビリティに向けた都市要請に対し、無人のWaymoは将来的にライドシェアのプラットフォームとして機能することで、都市の負債を解消する公共交通的な役割を担う可能性を秘めている。技術の実装と法制度が驚くべき速度で更新されるカリフォルニアの都市空間では、既存の道路や都市の形を作り変えるだけでなく、ソフトウェアの力で機能や利便性を効率的に再編集してしまう、日本国内では実現しにくい都市開発の姿勢が垣間見えた。

 

★1──今回乗車したのはノースビーチエリアからユニオンスクエアまで約2kmの区間。チップは不要で、運賃は15ドルほどであった。
★2──星新一『星新一ショートショートセレクション4 奇妙な旅行』(理論社、2002)に収録。あらゆる機能が揃う万能な車両が、快適であるがあまり速度が不要とされ、最高速度は約30kmと皮肉的に描かれる。 
★3──https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN2509E0V20C22A8000000/
★4──https://www.dmv.ca.gov/portal/vehicle-registration/license-plates-decals-and-placards/clean-air-vehicle-decals-for-using-carpool-lanes/

体験日:2025/12/28(日)