1983年の創業以来、『ロックマン』、『ストリートファイター』、『バイオハザード』、『逆転裁判』などの人気シリーズ生み出してきたカプコン。大阪、名古屋、鳥取会場での巡回を経て、現在東京会場で開催されている「大カプコン展 ─世界を魅了するゲームクリエイション」は、そんな同社の歩みを振り返りつつ、そのクリエイティブについて解説・体験する内容となっていた。

会期:2025/12/20〜2026/2/22
会場:CREATIVE MUSEUM TOKYO[東京都]
公式サイト:https://daicapcomten.jp

そもそも今回の展覧会は、大阪・関西万博に合わせて大阪中之島美術館で昨年の3月に開幕したものでもある。ゆえにライトユーザーにもわかりやすいよう、体験的な展示でゲームのクリエイティブについてプレゼンテーションすることにその主眼が置かれていた。例えば1980年代から90年代のドット絵の時代、開発者たちはマス目に一つひとつ色を置きながらドット絵を描いていた。その作業を体験するために、タブレット端末では塗り絵のような感覚でカプコンのキャラクターを描くことが出来る機器が設置されていたり、音響の進化が感じられるよう歴代のゲーム映像が流れ、1chから7.1.4chにまで立体化したサウンドデザインを楽しめるコーナーが設けられていた。モーションキャプチャーのトラッキングミラー体験や効果音についての映像など、ひとつのゲームにどれだけの技術が総動員されているかが、貴重な設定資料とともに直感として理解出来るよう設計されていたのが印象的だった。

ポスター/メインアートの展示[以下すべて、筆者撮影][以下展示作品はすべて、©CAPCOM]

大まかにはこうした建付けのもとに構成された展示だったが、カプコンはそのヴィジュアル・イメージによって世界にその影響力を示してきたことも忘れてはならない。同社は80年代よりアーケードゲームを業務用として販売していたが、当時のビジネスモデルにおいては営業とディーラーによってやり取りされるため、広告は売り上げに直結するわけではなかった。にもかかわらず、カプコンのクリエイターたちは当時からポスター制作に力を入れていた★1。会場に並べられた数々のポスターやその原画は、そうした社風を証言する歴史的資料となっている。ここでは国内外のメインアートが展示されていたが、欧州版の『ロックマン』のそれは手塚治虫以降の日本のマンガ的スタイルではなく、写実的に描かれておりローカライズの違いも興味深い。

ポスター/メインアートの展示

また、カプコンのゲームは個性的なキャラクターがとても多く、コンテンツを支えるなくてはならない存在となっている。伝えられた史実や逸話から想像力を膨らませた『戦国BASARA』シリーズはその傾向を如実に反映したタイトルだが、その流れを決定づけたシリーズとして、90年代のブーム以降、現在はeスポーツとしても世界的に親しまれている格闘ゲーム『ストリートファイター』シリーズについて触れておかねばならないだろう。

同シリーズについてとくに言及しておきたい点は、そのキャラクターデザインが、当時まだ細かい表現が出来なかったドット絵の制約と関係していることである。例えば春麗を生み出したあきまん(安田朗)は、そのデザインについて次のように語っている。

ドット絵にすると、手や足ってわかりにくいんですよ。足のあたりは暗くなるから、白くしないといけないし、頭につけたボンボリも、白くしないと目立たない。★2

このように、春麗のデザインはあくまでもゲーム上の見栄えを前提に決定されている。斜め前から描かれた姿での登場が多い『逆転検事』シリーズのキャラクターがその角度で「映えるデザインやモーションを積極的に取り入れ★3」られているように、カプコンのキャラクターたちは他のメディアとは異なる、ゲームならではの要請によって作られていることがここから理解できるだろう。

「ドット絵時代の創意工夫」

そしてこうしたキャラクターの明快さを、ある種の記号的処理として提示したことが『ストリートファイター』シリーズを世界的なタイトルに押し上げることになった。それは中川大地が端的にまとめるように、「意匠デザインやバックストーリーの面では、世界各国のイメージを極端にステレオタイプ化し、アメコミヒーローのようなフリーキーさと『キン肉マン』(1979-)、『ジョジョの奇妙な冒険』(1987-)といった異能バトル漫画などの造形やドラマツルギーが接合した過剰さに溢れるテイスト★4」によって達成されたものなのである。『ストリートファイター』シリーズに登場する相撲力士、エドモンド本田はまさしくそういったデザインセンスを反映したキャラクターだと言えるだろう。

後編へ)※2/6公開予定

 

★1──「対談 あきまん×村田蓮爾 九〇年代初頭の『マンガリアル』」(『季刊エス』27号、飛鳥新社、2009、87頁)
★2──多根清史、宮昌太朗、志田英邦、結城昌弘取材・文『ゲームの流儀』(太田出版、2012、248-249頁)
★3──ファミ通責任編集『カプコンビジュアルワークス 2004-2014』(KADOKAWA、2015、119頁)
★4──中川大地『現代ゲーム全史 文明の遊戯史観から』(早川書房、2016、235~236頁)

参考文献
・大カプコン展 —世界を魅了するゲームクリエイション『大カプコン展公式図録』(読売新聞社、2025)
・「ミリオンセールスタイトル」(『株式会社カプコン』、https://www.capcom.co.jp/ir/business/million.html

鑑賞日:2026/01/23(金)