
会期:2026/01/15~2026/03/22
会場:パナソニック汐留美術館[東京都]
公式サイト:https://panasonic.co.jp/ew/museum/exhibition/26/260115/
AIの台頭により、いま、産業革命に匹敵するほどのパラダイムシフトを迎えているといわれる。そんな現代を生きる我々にとって、本展は大変興味深いものだった。ちょうど1世紀前の20世紀初頭、日本では大正デモクラシーの嵐が吹き荒れ、ウィリアム・モリスの余波もあり、西欧美術に憧れた人たちのなかから柳宗悦が中心となって民藝運動が起きた。本展はそれを起点として、建築家の今和次郎が行なった民家研究や民具調査などのフィールドワーク、関東大震災後に生まれた郊外アトリエや芸術家コロニー、画家の山本鼎が主導した農民美術運動や宮沢賢治の活動などいくつかの美術運動、そして戦後まもなく文化活動家の井上房一郎が高名な建築家らと共に手がけた都市再生などを紹介する。20世紀前半に起きた美術、工芸、建築の流れを追いつつ、暮らしにまつわる過去を訪ね、未来を夢見たさまざまな運動を「ユートピア」と呼ぶのだ。

今純三《考現学調査葉書 自宅アトリエの窓外風景》(1931)、工学院大学 学術情報センター工手の泉蔵

山本鼎《スケッチ パイワン族 小箱の蓋(百歩蛇)》(1924)、上田市立美術館蔵

デザイン:ブルーノ・タウト「ヤーンバスケット」(1934-36)、群馬県立歴史博物館蔵
全編を通して観ると、日本が近代化へと突き進んだ1世紀前、急変する社会や暮らしに対して庶民は戸惑い、悩み、もがきながらも、なんとか希望を見出そうとあがいていたのではないかと想像する。足元が大きく揺らいでいたからこそ、自らが拠って立つ場所を必死に探そうとしたのだろう。そうして生まれたのがさまざまな運動であるのだが、「ユートピア」と名付けられたせいか、どこか尊くて美しいロマンチシズムが漂っているように感じてならない。というのも戦後に猛スピードで高度経済成長した時代に比べれば、この頃はまだ時間の流れがゆっくりであった。そのため彼らは地に足をつけて、理想の社会や暮らしについてじっくり思考したり、仲間同士で討論したりする時間が与えられていたように思う。ロマンチシズムを感じるのはそうした独特の空気による。
「歴史に学ぶ」ではないが、この当時の人々の気概を、いま、再びパラダイムシフトの最中にいる我々は学ぶべきである。AIのような先端技術を使うことは決して否定しないが、それに頼りすぎて、現代の我々は自ら思考することを放棄してしまっているようにも感じるのだ。あくまで人間主体であることを肝に銘じつつ、未来に向けてどんなユートピアを描けば皆が幸せになれるのかを、今一度真剣に考えるときが来ている。
鑑賞日:2026/01/31(土)