会期:2025/12/13~2026/03/22
会場:印刷博物館 P&Pギャラリー[東京都]
公式サイト:https://www.printing-museum.org/collection/exhibition/g20251213.php

個人的な話になるが、とあるプロジェクトでここ3年程かけて書籍作りを進めている。なぜ、そんなに時間がかかっているのかといえば、千ページを超える膨大なページ数の書籍に仕上がりそうな勢いであるからだ。プロジェクトが始まった当初は、今どき、そんな分厚い書籍を誰が買って読むのかと懐疑的ではあった。オールドメディアという言葉が聞かれて久しいが、書籍ほど伝統的なメディアはないだろう。しかし3年程経つうちに、今だからこそ、逆にこの究極のオールドメディアは新鮮に受け止められるのではないかと思えるようになってきた。この先、電子書籍やSNS、AIがどんなに幅を利かせたとしても、閲覧にあたって通電の必要がなく、また物理的に保存性が高いという点でも、最後の砦として書籍はきっと他のニューメディアと共存していくに違いない。


展示風景 印刷博物館 P&Pギャラリー

「世界で最も美しい本2025コンクール」受賞図書14点を一覧すると、今回も斬新なアイデアと工夫により、書籍にしかできない表現に果敢に挑んでいるものが多いように感じた。ニューメディアの台頭により、その地位が脅かされているからこそ、いま、書籍が生き延びる道はそれしかないのだ。中国の図書が1点入っていたものの、受賞作のほぼすべてがヨーロッパ圏ということもあり、まず全体的に文字組の自由度を感じた。例えば見開きスペースのほぼ半分くらいを余白として残しながら文字組したレイアウトから、ページを繰るうちに、その文字組の形や大きさが徐々に変化していく本。段落先頭の文字が半行くらいのスペースを空けてから始まる文字組。横組を基本としながら、同じページの中に縦組(欧文の場合、下から上へ流れる)も介在するレイアウトなどである。いずれも些細な点ばかりであるが、しかし文字組のデザインでその図書の品格も決まるように感じるのだ。


展示風景 印刷博物館 P&Pギャラリー

もうひとつ注目したのは、銅賞を受賞したドイツの図書『Size Matters』で、サイズの重要性について問う実験的な内容だった。一見、普通の図録のようにさまざまな作品写真が並んでいるものの、それらは元の姿がわからないほど極端に拡大された写真であったり、大きなサイズの一部を原寸大で切り取ったりした写真なのである。さらに巻末に並んだ作品のキャプション文字が、本文より大きな文字に設定されていて度肝を抜かれた。こうしたサイズに関する挑戦的な表現は、デバイスに左右されない書籍でこそ実践できるというわけである。次回以降もどんな受賞図書が出てくるのか楽しみである。

鑑賞日:2026/01/31(土)