会期:2026/02/12~2026/03/26
会場:ギンザ・グラフィック・ギャラリー [東京都]
公式サイト:https://www.dnpfcp.jp/gallery/ggg/jp/00000851

ポスターというのは、公共の場で不特定多数の人々に対して視覚的に訴える宣伝媒体である。したがって、その公共の場を取り巻く社会の形によってスタイルがまったく変わってくる。ということに気づいたのが、本展で取り上げられているポーランド派のポスター芸術だ。


展示風景 ギンザ・グラフィック・ギャラリー[撮影:藤塚光政]

ポーランド派とはいったい何なのか。私も改めて認識したのだが、ポーランドは第二次世界大戦前にはナチス・ドイツの支配下にあり、また戦後はソ連の共産主義体制下に置かれた国だった。当然ながら人々は長い間、精神的に抑圧された環境にあり、こうした社会体制に対する抵抗や民主化への希求が、ポスター作家が個を強く意識するきっかけになったのではないかという指摘がある。また資本主義体制と共産主義体制とではモノの流通や消費の構造が異なる。つまり前者では当たり前にある商品の販売促進を目的にしたポスターが、後者には存在しないのである。そんなコマーシャリズムとは無縁の社会では、ポスターの役目も変わる。ポーランドでは戦後当初、強要されていた社会主義リアリズムが1950年代半ばには薄れていき、むしろポスターは芸術作品と同様の評価がなされる自由な表現媒体へと変わっていったという。これがポーランド派と謳われる芸術性の高いポスターの正体で、主に映画や演劇、音楽会などの文化ポスターが主流を占めた。その代表作家のひとりがヤン・レニツァなのである。


展示風景 ギンザ・グラフィック・ギャラリー[撮影:藤塚光政]

彼が手がけたポスター群を観ると、黒を多用した全体的に暗い色調や、絵筆による不均一な描線、ちょっと毒を含んだようなシニカルな面など、これまでにあまり見たことのない独特の個性に満ちていて、言葉を失った。これをいったいどう解釈し評価したらいいのか。レニツァはアニメーション作家としても活躍したのだが、そのアニメーションを観ても摩訶不思議な世界が展開されているばかりで、何とも形容しがたいのである。これは一言でいえば、文化の違いなのだろう。我々日本人は戦後ずっと欧米文化を享受し、多大な影響を受けてきた。しかしそれは同じ欧州でも西欧の文化であり、東欧の文化に関しては未知だったのである。本展を通してそのことに改めて気づかされたと同時に、新しい芸術やデザインとの出合いに新鮮な気持ちを抱いたのだった。


展示風景 ギンザ・グラフィック・ギャラリー[撮影:藤塚光政]

鑑賞日:2026/02/26(木)