上映:2026/05/01~
会場:ユーロスペースほか全国順次公開
公式サイト:https://trenova.jp/coranddoshi/

前川國男、坂倉準三、吉阪隆正と、日本にはル・コルビュジエの弟子が3人いたことが知られているが、インドにもそうした弟子がいた。ル・コルビュジエの下でモダニズム建築を学び、故郷へ帰った後は自らが国内における近代建築の父となって活躍したという点が彼らには共通している。そんないわばインドの前川國男ともいうべき人物が、バルクリシュナ・ヴィタルダス・ドーシである。ただし世代的にはドーシの方がずいぶん若く、また晩年にインド人で初めてプリツカー賞を受賞するなどインパクトは大きい。ル・コルビュジエとインドとのつながりといえば、チャンディガールの都市計画が挙げられる。それについては特集上映で同時公開されるもう一本のドキュメンタリー映画『ユートピアの力』(監督:カリン・ブッハー、トーマス・カラー、2023年製作)で取り上げられているが、ドーシはちょうどその計画が始まる頃にル・コルビュジエのスタジオで働き始めたようである。彼が師匠の片腕となって国内の実施設計を担ったのは、インド西部の都市アーメダバードのプロジェクト──サラバイ邸、ショーダン邸、繊維業会館などだ。また彼は米国人建築家のルイス・カーンとも協働した経歴を持つ。本作はそうした名建築を年老いたドーシ自身が訪れ、当時のエピソードを振り返りながら紹介する内容となっている。

建築でも地場産業であっても、一般的に設計やデザインにおいて最も大切にすべきことは「洗練と土着」に尽きるだろう。したがってドーシがモダニズム建築を出発点にしながらも、母国で建築家としてキャリアを積むにあたり、インドの伝統や風土、精神性を融合した独自のスタイルを築いていったという点には非常に納得できる。特にインドはカースト制度が根強く残る社会であり、世界のなかでも貧富の格差が大きい。印象的だったのは、彼が低コスト住宅プロジェクトに取り組んだことに触れるインタビューシーンである。「インドには貧しい人がたくさんいる」という事実を、小学生の頃に自覚したと振り返るのだ。そのときに彼はある誓いを立てたと語る。本作のタイトルでもあるその「誓い」が何なのかというのが、彼の建築家人生を語るうえでのキーワードとなってくる。かつてインド社会の大多数を占めたとされる、貧困層も包括した「人々のための建築」を志向する姿勢が、ドーシ流の「土着」の根底にはあるようだ。

鑑賞日:2026/03/01(日)

『誓い 建築家B・V・ドーシ』
2023年製作/ドイツ/90 分/カラー/5.1ch/英語、グジャラート語、ヒンディー語
原題:THE PROMISE. ARCHITECT BV DOSHI
撮影:ディートハルト・プレンゲル
編集:サラ・J・レヴィン
音楽:バルトーク・ベーラ
出演:バルクリシュナ・ドーシ、スフリド・サラバイ、スーリヤ・カカニ
企画・配給:トレノバ