上映:2026/04/10~2026/04/24
会場:新宿ピカデリーほか全国公開
公式サイト:https://filmaga.filmarks.com/articles/330649/

現在まで続く北欧デザインブームのきっかけのひとつになったといえるのが、映画『かもめ食堂』である。嬉しいことに、公開20周年記念として2026年4月10日より2週間限定で全国リバイバル上映されることになった。もう20年も経つということは、北欧デザインは一過性のブームに終わらず、日本にすっかり定着したという証である。公開当時、私も映画館で観てとても気に入り、その後も荻上直子監督の映画を追いかけ、さらにDVDを購入して何度も観るなど、その世界観にどっぷりとハマった。いまでは動画配信サービスでいつでも気軽に観られる環境にある。にもかかわらず、映画館でのリバイバル上映がかなうとは、よほどファンからの熱望があってのことなのだろう。


[© 2006 かもめ商会]

本作は、フィンランド・ヘルシンキの街角で食堂を営む日本人女性を中心に、そこを訪れる客や人々との暖かな交流を一つひとつ紡ぎ、ゼロだった客が満席になるまでを坦々と描いた物語である。と、あらすじはシンプルながら、店主を演じる俳優の小林聡美が少女のような透明感を漂わせていたり、彼女の周囲に集まる人々や客が実に個性豊かだったりと、まるでおとぎ話のような世界観に包まれているのが本作の魅力なのだ。また水色の腰壁がおしゃれな店内で供される食器はイッタラやアラビア、店主たちが身に付けている洋服は鮮やかな色柄のマリメッコなどで、フィンランドを代表するブランドが随所に登場するのも、おとぎ話の世界観を増幅させる。一方で、食堂の看板メニューはおにぎり、定食は生姜焼きやトンカツ、唐揚げ、焼き鮭など、日本人なら観ていてお腹が空いてくるメニューばかりなのである。このおいしそうな料理を手がけたのが、人気フードスタイリストの飯島奈美だったのも話題となった。


[© 2006 かもめ商会]

2000年代当時は、この食堂の舞台となったカフェやロケ地を巡るヘルシンキ・ツアーが組まれるほどの人気ぶりであった。深い森やのどかな海辺、上空を飛び交うカモメの群れ、新鮮な野菜が並ぶ市場、そして自分の時間を大切に生きる地元の人々と、おとぎ話を彩る要素はどれも素朴で暖かく、私を含めファンが夢中になったのは、そうした幸福度の高そうな北欧の暮らしそのものだったようにも思う。20年経っても色褪せることのない、珠玉の一作を劇場でまた味わいたい。


[© 2006 かもめ商会]

鑑賞日:2026/03/05(木)

『かもめ食堂』
2005年製作/日本/102 分/カラー/日本語、フィンランド語
脚本:荻上直子
原作:群ようこ
出演:小林聡美、片桐はいり、もたいまさこ、ヤルッコ・ニエミ、タリア・マルクス、マルック・ペルトラ
配給:Filmarks、日活