会期:2024/02/09~2024/02/29
会場:フジフイルム スクエア[東京都]
公式サイト:https://fujifilmsquare.jp/exhibition/240209_03.html

「空を自由に飛び回りたい」という願いは、人類に共通した夢なのではないだろうか。写真家もまた19世紀に写真術が発明されて以来、上空から撮影した写真=空撮に挑んできた。最初は気球、さらに飛行機やヘリコプターなどから撮影した写真を見ると、写真家たちの憧れと探求心がそのまま形をとっているように思えてくる。近年はドローンが発達して、無人の空撮も簡単にできるようになった。だがそれでも、今回山本直洋が試みた、エンジン付きの飛行装置を背負ったモーターパラグライダーによる撮影は、また違った意味を持っているように思える。身体ごと空中に浮遊することで、まさに空から下界を見下ろす視覚的体験を、より生々しく味わわせてくれるからだ。

1978年、東京生まれの山本は、スタジオ勤務などを経て2008年に独立し、モーターパラグライダーでの撮影を中心に仕事をするようになった。今回の展示では、富士山など日本各地の風景だけでなく、カナダ、ノルウェー、オーストラリアなど、海外の写真も展示していた。彼はいま、世界七大陸の最高峰を空から撮影するという「Above the Seven Summits Project 世界七大陸最高峰空撮プロジェクト」にも挑戦中で、そのうちのアフリカ大陸の最高峰、タンザニアのキリマンジャロ山の写真もあった。どれも、標高5000メートルまで上ることができるというモーターパラグライダーの性能を活かした、迫力のある眺めばかりなのだが、特に空中を飛んでいる鳥たちが写り込んでいる写真が印象に残った。考えてみれば、普通は飛翔中の鳥の姿を間近で見る機会はほとんどないだろう。空から地上を見下ろすだけでなく、空中の生き物、飛行機、パラグライダーやハングライダーで飛行中の人などを撮影するという視点も考えられるのではないだろうか。空撮には、まだまだ新たな視覚を開拓できる余地がありそうだ。

鑑賞日:2024/02/26(月)