会期:2024/02/13~2024/03/02
会場:IG Photo Gallery[東京都]
公式サイト:https://www.igpg.jp/exhibition/fujioka.html

藤岡亜弥は日本大学芸術学部写真学科を卒業後の1996年に「風に吹かれるまま」に台湾を訪れ、1年半ほど滞在していたことがある。昼間は北京語の学校に通い、夜はやや怪しげな日本語教師をしていたという。藤岡はその後、フィンランド、ブラジル、アメリカ・ニューヨークなどに長期滞在して写真を撮影するようになった。思いがけない出会いの瞬間を切り取ってスナップ写真におさめていく、その撮影スタイルの原型ができ上がったのが台湾だったといえそうだ。

藤岡は2019年にアーティスト・イン・レジデンスで、台湾の地方都市、花蓮でひと月ほど過ごした。その久しぶりの台湾滞在時の写真と1996年撮影の写真を混在させて、花蓮で写真展「時間旅行 Time Traveler」を開催したのだが、今回のIG Photo Galleryでの展示はその東京ヴァージョンということになる。

31点の、A2判ほどの大きさにプリントされた写真群を見て驚いたのは、1996年の写真と2019年の写真とのあいだにあまり違いを感じられなかったことだ。南の国の、どこか緩い空気感が同じということもあるだろうが、それ以上に、藤岡の一見ノンシャランな、だが的確に被写体を掴みとる視線の向け方が一貫しているということだろう。カメラを構えて対象物に向き合う姿勢、融通無碍にシャッターを切っていくタイミングのとり方は、1996年の段階ですでにほぼ身についていたのではないだろうか。それとともに、まさにTime Travelerのように時空を飛び越えていくあり方こそが、写真という表現メディアの特質であることをあらためて感じることができた。撮ること、見せることの喜びが伝わってくるいい展覧会だった。

鑑賞日:2024/02/28(水)