会期:2024/03/05〜2024/03/31
会場:JCIIフォトサロン[東京都]
公式サイト:https://www.jcii-cameramuseum.jp/photosalon/2024/01/10/34533/
石山貴美子は、新聞や雑誌などでエディトリアルな写真を撮影し続けてきた。街のスナップ写真を集成した写真集『石山貴美子写真帖』(新宿書房、2005)も刊行している。その意味では、今回JCIIフォトサロンで展示された「マネキン」シリーズは、彼女にとって珍しい仕事といえる。特定のテーマを、これだけ集中して撮影し続けた作品はほかにはない。
石山がマネキンに惹かれた理由は、倉庫で埃をかぶって無造作におかれていた裸のマネキンたちに「強い意志が見え、まるで生きているように感じた」からだという。マネキン人形は人々の購買意欲を刺激するように、若く美しい女性の姿で制作される。だが、その役目を終えて、バラバラに分解されて投げ出されたその姿が、逆に自己の存在を強く主張しているように感じられたということだ。そこに、社会のなかでの息苦しさから脱しようとする“女性”像を投影するという視点もあったのではないだろうか。
とはいえ、石山の写真に声高な告発の調子はあまり感じられない。どの写真にも、ひっそりと佇んでいるマネキンたちにそっと寄り添い、その囁きに耳を傾けるような感触がある。体のパーツが思いがけないやり方で組み合わされた様子は、シュルレアリスティックでもある。多彩な魅力を秘めた作品といえるだろう。
鑑賞日:2024/03/05(火)