近年、美術家の川俣正が提唱し続けている概念。言葉そのものは「既存の美術言語や流行、美的価値や社会的な規範からなる常識的言語に裏打ちされた『美』なるもの全般に対する懐疑」や「アートそのものに対しての存在意義を問う」(『アートレス――マイノリティとしての現代美術』)ことを意味している。アートに対する盲目的な信仰を意味する「アートフル」と対で用いられることが多いが、かといってニヒリスティックな反芸術志向を強調するのではなく、あくまでもアートと社会とのバランスを強調することに主眼が置かれている。現代美術が「マイノリティ」であることを自認し、都市の内部に寄生的なインスタレーションを展開する作業を続けてきた川俣ならではの発想であり、アートに対する盲目的な信仰はもちろん、ポピュラリティにおもねようとするアートの安易な社会化に対しての批判も窺うことができるだろう。アートと社会の緊張関係を重視した貴重な提言である。
(暮沢剛巳)
関連URL
●川俣正 http://www.dnp.co.jp/museum/nmp/nmp_j/people/t-kawamata.html
|