美術作品と売買は不可分の関係にある。なるほど、売買を主目的に作品を制作するのは本末転倒かもしれないが、しかし現代美術もまた紛れもなく売買の対象であるし、作品の売買(コミッションワークへの委託も含む)なくして、その作家が評価されているとは言い難いからである。もちろん、現代美術が貨幣経済の一環へと組み込まれるのを潔しとしないアーティストは少なくなかった。美術の諸制度を批判する側面をもつインスタレーション、コンセプチュアル・アート、アースワークなどは、いずれも作品の商品性に対する批判ともなっているわけだが、貪欲なコレクターの存在、並びに美術館の分類整理の欲望は、これらの作品をも市場の理論へと回収してしまった。もちろん、現代美術の作品はまだ評価が定まっていないだけに投機的な価値に乏しく、少数の目利きのコレクターを例外とすれば、大半の作家は美術館による「ミュージアム・ピース」としての作品購入に依存しなければならない。今日の美術を、美術館学芸員が主導する「キュレーターの時代」の根拠のひとつがここにある。
(暮沢剛巳)
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