美術の領域では、各部分の形態を、そのそれぞれが独自に持っている色やヴォリューム、また動勢などをたくみに調整しながら絡めあわせ、ひとつの全体としてまとまった作品をつくり上げること。「構成」、また絵画の場合は「構図」とも訳される。ヨーロッパ美術では、近世から近代へと向かうなかで、このコンポジションは強く意識されるようになった(レオナルド、プッサン、ダヴィッド、セザンヌ……そしてなにより彼らの作品をめぐるディスクールのなかで)。また20世紀初頭の絵画、特に抽象絵画の多くが、この「コンポジション」の語を作品のタイトルに取り入れているのは、美術作品の自律的価値、あるいは形式的/形態的側面が重視されるようになったことの表われだろう。そして第2次大戦後のアメリカの美術、特に抽象表現主義とミニマル・アートは、この「コンポジション」を強く批判する。まず中心となる部分があり、その中心にほかの部分が従属するような、そしてさまざまなバランスを考慮しつつ部分と部分を関係づけてゆくようなやり方は、作品の形態を決定するものとして因習的、恣意的であり、もはや有効ではないとされる。全体性(wholeness)やシンメトリーは、彼らによってコンポジションを乗り超えるものとして構想されたものである。
(林卓行)
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