ひとつの作品が、全体と部分というヒエラルキーなしに、強固な統一体であること。すなわち、「部分がただちに全体となる」こと。ミニマル・アートにおいて、イリュージョンの放逐と並んで、重要なことである。作品の「全体性」を保証するのは、マイケル・フリードも指摘する通り、形体の「単一性」(singleness)である。旧来の芸術は部分を構成して、統一体を成していたが、抽象表現主義絵画に至ると、オールオーヴァー(all
over)になる。すなわち、画面は、ある技法や構図によって、かぎりなく均質に全面を覆われる。このオールオーヴァーな性質は「全体性」の先駆ではあるが、抽象表現主義絵画があくまで絵画であったのに対して、ミニマル・アートの場合、絵画でも彫刻でもない新たな三次元の作品になるのだ。
(三上真理子)
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