ファッション写真のスタイルを借用して制作された「芸術的な」写真の通称。別名は「ファッション・センシビリティ」。ファッション写真の歴史は19世紀にまで遡り、被写体である衣装やモデルの美しさを引き立てるために、さまざまな技法が導入されてきた。その一環を占めるファッション写真の「芸術化」の例としては、1920年代の『ヴォーグ』におけるピクトリアリズムやシュルレアリスム風の写真、あるいは1950年代の『ハーパーズ・バザー』におけるブラッサイやH=C・ブレッソンらの起用などを挙げることができる。それでもなお、芸術写真とファッション写真の間には厳密な線引きが為され、その「美」は異質なものとみなされてきていたのだが、1978年にメトロポリタン美術館で開催されたR・アヴェドンの回顧展は、両者の線引きを根底から揺るがす画期的な展覧会だった。それ以降のR・メイプルソープ、H・ニュートン、H・リッツといった写真家の仕事は、その越境的な作風や横断的な活躍ぶりによって、この線引き自体を無効としているように思われる。
(暮沢剛巳)
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