日本語で「格子」「碁盤目」の意味。具体的な作品例としてはP・モンドリアンやK・マレーヴィチ、デ・ステイル、フランク・ステラらのそれを思い浮かべるとわかりやすい。戦後アメリカの美術批評においてグリッドは、たとえばポール・テイラーが格子風のデザインを「モダニズムの固定観念」だと書いたように、モダニズム絵画と結びつけて語られてきた。というのも、グリッドそのものは遠近法にも使用されていたものの、モンドリアン、マレーヴィチ、あるいはA・ラインハート等の作品に見られるグリッドは遠近法のもつ三次元性、あるいは物語性といったものを全く排除していたからである。ポストモダニズムの批評家ロザリンド・クラウスは、20世紀前半に絵画の世界を席巻したこの現象(グリッド)を指して「決然としたマテリアリズム(唯物主義)」と呼んだ。これらグリッドによる画面構成という問題は、ときにはキュビスムを先例としたり、ロシア構成主義、あるいはロマン派絵画における窓などからの説明が試みられたが、十分な解答は得られていない。以上のようにグリッドが批評用語として問題化されたのはいわゆるモダニズム、ポストモダニズム批評においてであったが、格子模様や格子の発生については先史時代の文様や都市計画、またはいわゆるナイーヴ・アートの研究のなかですでに19世紀後半には論じられている。
(浅沼敬子)
関連URL
●P・モンドリアン http://www.dnp.co.jp/museum/nmp/nmp_j/people/p-mondrian.html
|