常軌を逸した精神状態。理性が関与せず、本能と深い関係がある。S・フロイトによる「無意識」の発見に伴い、20世紀以降芸術関係者の狂気に対する興味は高まった。1921年にスイスの精神病患者アドルフ・ヴェルフリの作品がその医師によって紹介され、その翌年にはハンス・プリンツホルンの『精神病者の芸術性(Bildnerei
der Geisteskranken)』が出版された。これらの著作に掲載された「精神病の巨匠たち」が制作した作品の図版は、シュルレアリストたちやアール・ブリュットの創始者J・デュビュッフェに大きな影響を与えた。ロサンゼルス・カウンティ・ミュージアム主催の「パラレル・ヴィジョン――20世紀美術とアウトサイダー・アート」展(1992)は、このような狂気の芸術家たちと20世紀アヴァンギャルドとの影響関係を主題とした。マイノリティーの重視という政治的見解とも連動しているこの展覧会において、狂気の芸術家たちはアウトサイダーであるが、インサイダーと同等に彼らの作品は芸術として有効だと考えられた。いかに多くの芸術家が彼らの理性を超える狂気の表出に魅せられ、彼らからインスピレーションを受けようとも、狂気の芸術家はやはりアウトサイダーなのである。
(三上真理子)
関連URL
●J・デュビュッフェ http://www.dnp.co.jp/museum/nmp/nmp_j/people/j-dubuffet.html
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