1998年、彫刻家の川嶋清の個展が、東京都月島の画廊、タマダプロジェクトコーポレーションにて開かれたが、その個展カタログに、意図に反する展示写真を掲載されたとして、作家が著作権における同一性保持権の侵害だとする損害賠償請求訴訟を起こした問題。問題となった写真は、ある作品の横に違う作品を置いて撮影したもの。川嶋清(1951−)は、ミニマリズムを通過して、木、鉄、ガラスなどさまざまな素材を寄せ集めるアサンブラージュの手法で彫刻を制作する作家だが、自分の彫刻は周囲の空間まで含めて作品であるとの立場をとっており、そこには何も置かないでほしいという要請を出していたという。この問題の背景には、ミニマリズム以後、空間全体を作品として提示するインスタレーションという形式が現代美術の手法として一般化し、作品の周囲の空間を強く意識するようになったアーティストと、コンテクストの異なる複数の作品を並置することによって展覧会を構成するキュレーターとの間のせめぎ合いがある。
(鷲田めるろ)
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