1970年代中頃以降の欧米で盛んに試みられた、改変され、装飾された 写真表現の総称。ほぼ同時期に同じ場所で展開された「ファブリケイテッド・フォトグラフィ」が、徹底的にアーティファクトとしての被写体にこだわるのに対して、「マニピュレイテッド・フォトグラフィ」の方は、撮影された写真の操作=加工にこだわる点に特徴がある。代表的な作家としては、プリントした写真原版に表現主義的なドゥローイングを塗り重ねたA・ライナー、インスタント・カメラの乳剤を攪乱するL・サマラスなどが挙げられる。写真に加工する技法としては、古くは戦前の
フォトグラムや レイヨグラフィ、ソラリゼーションなどが知られており、「マニピュレイテッド・フォトグラフィ」もその系譜に位置するものだが、時代を経てより直接的、暴力的な手法に訴えているだけに、既存の写真表現に対する批評性も強い。そしてその批判の矛先は、もっぱら写真を記録媒体としか見なしていないかのような「ストレート・フォトグラフィ」に向けられている。
(暮沢剛巳)
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