何らかの「メディア」を活用したアート作品の総称。「表現媒体」を意味するMediaの原義に従えば、すべてのアート作品は必然的にメディアアートとみなされるのだが、この場合のメディアは、工学技術をはじめとする先端的テクノロジーという意味に限定される。新しいテクノロジーをアートに取り入れようとする試みいつの時代でも為されてきたことだが、1920年代にバウハウスが試みたさまざまな実験、あるいは1960年代の「オプ・アート」や「ライト・アート」などは、当時の水準としては画期的なメディアアートであったと考えられる。だがその後のコンピュータ・テクノロジーの目覚しい進展は、必然的にメディアアートの可能性をもそこに収斂させることになった。サイバースペース内のネットアートや複雑なシミュレーションを基幹としたインタラクティヴ・アート、あるいは解像度の高いグラフィックなど、今日のメディアアートは、ほとんどコンピュータ・アートの同義語と化した観がある。今後も様々な実験的な試みが増えていくと予想される半面、既存の研究や批評によるその評価には限界があるので、適切な評価基準の確立は急務であるし、またその進展が、メディアセンターと呼ばれる新しいタイプのミュージアムの成立を促したことにも注意すべきだろう。
(暮沢剛巳)
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