細かい規則的なパターン同士を重ね合せた時に生じる、干渉縞の模様。わたしたちの多くが眼にするのは、網点による映像をさらに網点による映像で複写するときに現われるそれだろう。ヴィデオ映像などでも同様の模様が出ることがある。言い換えれば、モワレは、ある映像が、もともと大量に生産/消費される映像をさらに映像化したものだということを示す、つまりそれがコピーのコピーであり、オリジナル/コピーの二元論を無効にする可能性をもったものだということを示す、格好の指標ということになる。例えばリチャード・プリンスが、新聞誌上の陳腐な写真イメージを再撮影して彼の作品とするときに生じるこのモワレ模様は、取り除かれるどころかむしろ強調される。シミュレイショニストにとって、モワレとはほとんどなくてはならないものだ。
(林卓行)
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