批評家R・クラウスが同名の著書(MIT Press, 1993)で提起した概念。同書においてクラウスは、従来のモダニズム美術史を徹底的に批判し、その再構成を意図して「視覚的無意識」というオルタナティヴを提示する。主な論及対象は1920年代から1950年代の美術で、M・エルンストやM・デュシャンからJ・ポロックやE・ヘスへと至る系譜を整理したクラウスは、これらの作家が共通して妄想的な幻想を帯びたレディ・メイドのイメージを帯びていることを指摘、それをモダニズムの強度として読み替え、モダニズムをフォーマリズム批評の形式概念から解放しようとした。G・バタイユらの仏文学、あるいはJ・ラカンらの現代思想に多くを依存するする立論はいかにも「オクトーバー」派の論客らしいが、チャートを多用して「視覚的無意識」の知覚図を的確にマッピングしていることもあり、クラウスの議論は一定の説得力と支持を獲得した。だがこうしたチャートの多用は、F・ジェイムソンと同様に、ポストモダニズムの論客が、モダニズムの破産→ポストモダニズムの到来という安直な物語を前提としていると誤解される一因ともなっている。
(暮沢剛巳)
関連URL
●M・エルンスト http://www.dnp.co.jp/museum/nmp/nmp_j/people/m-ernst.html
●M・デュシャン http://www.dnp.co.jp/museum/nmp/nmp_j/people/m-duchamp.html
●J・ポロック http://www.dnp.co.jp/museum/nmp/nmp_j/people/j-pollock.html
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