「空間主義」。ミラノを拠点としていたイタリアの画家L・フォンタナが提唱した理論上の立場。伝統的な芸術概念の克服と、工業技術を取り入れることによって、それに代わりうる三次元・四次元的な表現を目指そうとする。パリのアブストラクシオン=クレアシオンに参加するなど、戦前から変幻自在な活動を展開していたフォンタナが、初めてこの立場を標榜したのは1946年、戦禍を逃れて滞在していたブエノスアイレスにおいてだった。この南半球の都市において発表された「白の宣言」は、ネオンの光やテレビのような現代的テクノロジーの積極的な活用を説く一方、伝統的なイーゼル絵画のイリュージョンを批判するなど、新たな空間を探求しようとする強い意志が凝集されており、フォンタナ自身はそれをキャンヴァスに切り込みを入れるなどの手法によって表現した。運動としてのスパツィアリスモは、フォンタナの帰国後、R・クリッパ、C・ペヴェレック、J・ドゥーバらが参加することで組織されるが、52年にはマニフェストが終了するなど、短命に終わる。抽象表現主義やミニマリズムのヨーロッパにおける展開、あるいは環境芸術の意図を先取りした動向であったと言えよう。
(暮沢剛巳)
関連URL
●L・フォンタナ http://www.geocities.com/Athens/Agora/5156/
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