登場人物や背景など、被写体に一定の加工を行ない、画面の中にフィクショナルな世界を構築する写真の技法。その加工がしばしば「演出」に例えられることから、「ステージド・フォトグラフィ」と演劇的に形容される。画面の中を「演出」したいという写真家の欲望は、まだテクノロジーが未熟だった写真の黎明期から一貫して存在するものであり、早くも19世紀の後半には、O・レイランダーやH・P・ロビンソンといった写真家が、複数のネガの組み合わせによる写真の「演出」を行なっている。また20世紀の前半、シュルレアリストたちによって試みられた「ステージド・フォトグラフィ」は、記録媒体としての写真の客観性に対して疑問を提示する側面があった。戦後は、主にパフォーマンスやコンセプチュアル・アートと関連する形で展開されたが、演劇性を極限まで追求したC・シャーマンや森村泰昌やN・ゴールディンの自叙伝的作品など、そのヴァリエーションは極めて多岐にわたっており、ステージド・フォトグラフィの統一的傾向を把握することは困難である。
(暮沢剛巳)
関連URL
●H・P・ロビンソン http://www.geh.org/taschen/htmlsrc6/m197001920001_ful.html
●C・シャーマン http://www.dnp.co.jp/museum/nmp/nmp_j/people/c-sherman.html
●森村泰昌 http://www.dnp.co.jp/museum/nmp/nmp_j/people/y-morimura.html
|