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現代・〈版〉展
吉崎元章[芸術の森美術館] |
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「現代・〈版〉展」といっても、いわゆる版画の展覧会ではない。77点の出品作品のうち版画や写真など一般に「PRINT」と分類されるものが約7割を占めているが、残りの3割は、チラシに掲載した作品―木製ボートに布製の突起がウジャウジャ生えてきたような草間彌生の《ピンク・ボート》など、なぜこれが〈版〉なの?と思う作品であろう。ここでいう〈版〉とは、版画のことではなく、同じ価値や意味をもったまま複製され増えていくという〈版〉のもつ概念のことを言っている。生活のなかで日常的に見られる音楽や映像のダビング、文書のコピーなどの行為も同じこととしてとらえられるだろうし、テレビや印刷物など各家庭で目にするマス・メディアに流される情報も同一概念と言えるだろう。さらに言えばDNAも生命情報の複製である。現代社会にあふれているこの〈版〉をキーワードに、20世紀後半の現代美術を読み直そうと試みるのがこの展覧会なのである。 ![]() 全国の美術館から借用した作品で構成する展覧会で、これほど質の高い現代美術の作品が集まるのは、北海道ではあまり多くはない。これまで現代美術に馴染みのなかった人にもわかりやすくまとめられた本展を是非見てもらいたいものである。 なお、6月1日には手のひらを型どりして金属のもうひとつの手をつくるというワークショップ「うつしとられたメタルな私」が開かれる(詳しくはホームページ http://www.artpark.or.jpを)。図録プレゼントhttp://www.dnp.co.jp/artscape/present/index.html
●今年の北海道でのお奨め美術展 今年、北海道で開催される美術展のなかでなんといっても夏に帯広で開かれるとかち国際現代アート展「デメーテル」への期待は大きいが、4月になり各美術館の展覧会スケジュールが発表になったので、そのなかからお奨めのものをご紹介したい。 最も話題となっているのは、7月5日から8月25日まで北海道立近代美術館で開催されるゴッホ展( http://www.aurora-net.or.jp/gogh/)。日本国内ではここ十年ほどの間にも何度も開かれ、その都度多くの観覧者を集めているが、北海道では初めての本格的な開催となる。弟テオとの書簡を軸に構成するというから、ひと味違った物語性のある視点が期待をそそる。北海道立近代美術館開館25周年、北海道新聞創刊60周年、北海道文化放送開局30周年、その他関連企業の周年事業としてかなり力が入っており、北海道新聞の日曜版には早くもカラー刷りの特集の連載が始まっている。北海道立近代美術館の入館者レコード(20万人)も夢ではないかもしれない。 ほぼ時期を同じくして、芸術の森美術館では「イタリア・ルネサンス三大巨匠素描展―レオナルド、ミケランジェロ、ラファエロとその流派―」(6/30-8/18)が開かれる。美術史上最も有名なこの三作家の素描とその周辺の画家の作品約50点により、みずみずしい素描の魅力を紹介する。出品作品はすべてイタリア国内から借用するが、本国でも保存上の理由から展示されることは少なく、実作品を間近に見られるまたとない機会である。北海道でこの三巨匠の作品が展示されるのが初めてであるだけではなく、長期の展示が許可されない素描の展覧会のため、これほどの展覧会が松本市美術館と札幌でしか開かれないので、是非全国からも見に来てもらいたいものである。 市立小樽美術館の「ぼくらのヒーロー&ヒロイン展」(7/26-9/19)も興味深い。奈良美智、村上隆、西山美なコらの作品により、特撮や少女マンガに現れた憧れのヒーロー&ヒロインの世界で子ども時代の心をたどろうとするもの。奈良美智といえば、昨年横浜美術館で開催された奈良美智展が北海道立旭川美術館に巡回されるのも見逃せない(6/14-7/28)。 その他地元ゆかりの作家を掘り下げる展覧会が今年度はいつになく盛んだ。主なものをだけでも次のようなラインナップである(順不同)。亀山良雄展(芸術の森美術館、10/26-12/15)、国松登と国松明日香展(市立小樽美術館、6/1-7/21)、因藤壽展(北海道立旭川美術館、10/26-12/15)、池田緑展(北海道立帯広美術館、7/12-9/16)、赤穴宏展(北海道立釧路芸術館、9/28-11/24)、岩橋永遠展(北海道立函館美術館、5/28-7/7)、小寺真知子彫刻展(札幌彫刻美術館、6/8-7/14)、そして、岩橋英遠、片岡球子、難波田龍起、神田日勝、砂澤ビッキなど25作家による「回想・北海道の25人」(北海道立近代美術館、10/23-12/8)。さらに、居串佳一、木田金次郎、国松登、中村善策、松島正幸、三岸好太郎による「北の個人美術館散歩―風土を彩る6人の洋画家たち」(北海道立三岸好太郎美術館、5/31-7/14)。 このなかのいくつかについては、追って詳しく紹介していきたい。 [よしざき もとあき] |
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