一旦写真に撮ったポートレイトをペインティングにしている平林純。いわゆるフォトペインティングを学生時代からやってきた。これまで、正面を向いた顔を左右に軸を横にずらすかたちで描いていた。だが、今回出品していた一部の新作は、ほとんど正面は向いているものの、手を動かしていたりとてもリラックスした感じのスナップを使っている。目鼻はほとんど見えないほどにぼかしてしまっているが、着ているセーターの毛糸の編み目をクリアに描いて強調するなどしている。私たちは、向かい合って話している相手の顔を正面からたとえ見ていても、ずっと目と目を見つめ合って話したりはしない。はねている髪の先に、無意識のうちにフォーカスが合っていたりする。フォトペインティングという技法自体に変わりはないが、描いている主題に大きな変化があった。
[11月18日(日) 原久子]