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「アゲインスト・ネイチャー 80年代の日本美術」展

“Against Nature: Japanese Art in the Eighties”
更新日
2024年03月11日

1989年6月15日のサンフランシスコ近代美術館を皮切りに、アメリカ7都市およびICA名古屋に巡回した展覧会。キュレーターはキャシー・ハルブライヒ、トーマス・ソコロフスキ、河本信治、南條史生。展示作家は椿昇、大竹伸朗、ダムタイプ、舟越桂、宮島達男、森村泰昌、平林薫などで、当時、日本の現代美術の主流がもの派と見られていたアメリカにおいて、色彩豊かな具象作品やテクノロジーを主体にした、もの派の系譜ではない作家が選定された。ユイスマンスの『さかしま』の英訳でもある本展覧会名は、文字通り自然に相反する芸術を標榜するもので、「自然と一体化して生きている日本人」というステレオタイプに反発するところから企画がスタートした。翌90年、原美術館を皮切りにロサンゼルス・カウンティ・ミュージアムなどを巡回した「A Primal Spirit(10人の現代彫刻作家)」展の日本古来の自然に即した造形精神をテーマにした展示とは対照的であった。前年のヴェネツィア・ビエンナーレの有望な若手作家を紹介する「アペルト」展に宮島達男と森村泰昌が選出され、国際舞台において評価を得たアーティストが含まれていたこともあり、この展覧会が目指した新しい日本の現代美術像は広く観衆の目に焼き付いた。折しも同89年1月には昭和天皇が崩御、日本はバブル経済の絶頂期でありパラダイムシフトにふさわしい展覧会であったと言える。94年にアメリカを巡回した「戦後日本の前衛美術」展において、ダムタイプや森村泰昌をはじめとする80-90年代の現代美術が展示されたのは、「アゲインスト・ネイチャー」展の布石があったからであろう。

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補足情報

参考文献

Against Nature: Japanese Art in the Eighties,Grey Art Gallery & Study Center,1989
『海を渡る日本現代美術』,光山清子,勁草書房,2009