Artwords®

油絵茶屋

Aburae-jaya
更新日
2024年03月11日

茶(珈琲)を飲ませながら油絵を見せる見世物小屋。明治初期、五姓田芳柳と義松の親子が、浅草や深川、両国などで催した。展示されたのは、芝居絵や新聞錦絵の主題を、西洋伝来の新技術である油絵によって描いたもの。それらの多くは、他の見世物小屋と同様に、芸人による口上とともに見せられていた。同じく西洋伝来の茶(珈琲)を嗜むことができることもあって、当時の庶民に大きな人気を集めた。美術史家の木下直之は『美術という見世物』において、油絵茶屋を美術館も画廊もなかった時代において一般の日本人が油絵に接した出発点として位置づけている。近代美術の制度化に伴い、油絵は油絵茶屋から美術館に居を移し、口上のけたたましい声が奪われ、代わって静寂と沈黙が支配するようになった。画題も美術の外部にある物語に依存することをやめ、個人の内面に求められるようになった。近代美術は油絵茶屋を母胎としながらも、その出自と由来を消し去ることによって、近代美術の自立性を確立したわけだ。しかし、近代美術が隘路に陥って久しいなか、その限界を乗り越えるには、美術の原点のひとつである油絵茶屋という見世物小屋を直視することにあるように思われる。

著者

補足情報

参考文献

『美術という見世物』,木下直之,ちくま学芸文庫,1999
『美術という見世物』,木下直之,講談社学術文庫,2010
『本』2010年12月号,「油絵茶屋再訪」,木下直之,講談社

注・備考

※2011年秋、浅草寺の境内で「油絵茶屋再現:アートサイトクルージング」が行なわれた。主催はGTS(藝大・台東・墨田)観光アートプロジェクト。制作は小沢剛+油絵茶屋再現実行委員。