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アルビュメン・プリント/鶏卵紙

Albumen Print(英), Impression à l'albumine(仏)
更新日
2024年03月11日

1850年にフランスのルイ=デジレ・ブランカール=エブラールが発明した印画紙。卵白と塩化アンモニウムの溶液に浸けた紙を乾燥させ、そこに感光性のある硝酸銀水溶液を塗布したもの。写真術のパイオニアであるジョセフ・ニセフォール・ニエプスの縁者、クロード・フェリクス・アベル・ニエプス・ド・サン=ヴィクトールが発明した卵白コロディオン法を発展させた印画紙である。コロディオン法で撮影されたガラス板のネガをこの上に密着させて、太陽光に数分から数時間露光させることで焼き付ける。これによって一日に数百枚の写真を焼き付けることが可能となり、大量生産への道が拓かれた。出来上がりの像は茶色がかったセピア調の色となり、幅広い諧調と描写力に優れたやわらかい調子が特徴。鶏卵の皮膜層が空気から画像を保護する役目を果たしているが、紙が非常に薄いため厚い台紙に貼られて鑑賞された。日本では営業写真館を中心に広く普及し、開港地で土産物として売られた「横浜写真」のように手彩色を施すと鮮やかな疑似カラー写真となる。湿式コロディオン法とセットで使用されることの多かった鶏卵紙は、80年代初頭頃まで盛んに製作されるものの、その後は扱いやすく耐久性に優れたゼラチン・シルバー法に駆逐される。

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補足情報

参考文献

『幕末明治 横浜写真館物語』,斎藤多喜夫,吉川弘文館,2004