アンビエント・ミュージック
- Ambient Music
- 更新日
- 2024年03月11日
比較的静かな音響の微細な変化を表現の基調とし、ある特定の場所や空間に雰囲気を添えることを指向した音楽。「環境音楽(Environmental music)」とも呼ばれるが、「アンビエント・ミュージック」という場合はB・イーノが1975年頃に提唱した音楽様式に特化されることが多い。90年代になると、その派生型であるThe KLFらのアンビエント・ハウスやエレクトロニカなどのジャンルも含み、現在はこれらの音楽の総称として「アンビエント」という語が使われる。イーノがアンビエント・ミュージックを着想するに至った背景には、サティの《家具の音楽》(1920)や、周囲の偶発的な音を傾聴するケージの影響が大きい。イーノは彼らの思想と実践を受けてアンビエント・ミュージックを「聴き手に向かってくるのではなく、周囲から人を取り囲み、空間と奥行きで聴き手を包み込む音楽」と定義するが、この定義は、半ば強制的に音楽で空間を満たすMUZAK(企業などにBGMを提供する米国の企業)への批判とも解釈できる。イーノは、75年のアルバム『Discreet Music』を皮切りに、78年の『Music for Airport』から82年の『On Land』までのアルバム4枚を「アンビエント・シリーズ」として制作した。環境と融和した音響という概念は音響彫刻などのサウンド・アートと重なる部分が多く、アンビエント・ミュージックによって音楽の枠組みがさらに拡張したともいえるだろう。
補足情報
参考文献
『ブライアン・イーノ』,エリック・タム(小山景子訳),水声社,1994
『サウンド・アート 音楽の向こう側、耳と目の間』,エリック・タム(木幡和枝監訳),フィルムアート社,2010
『Ur』No.4,特集=アンビエント・ミュージック,ペヨトル工房,1991