アール・デコ・ファッション
- Art Deco Fashion
- 更新日
- 2024年03月11日
アール・デコ様式の影響が及んだ1920年代のファッション。一般に、アール・デコのデザインは、有機的な曲線を好んだアール・ヌーヴォー様式に対し、直線や幾何学的形態に特徴づけられるとされるが、そうした造形性はファッションにも及んだ。フランスでアール・ヌーヴォーが頂点を極めた1900年頃には、コルセットを使い、流れるような曲線美を強調したドレスが流行したが、第一次大戦後に迎えた20年代には、コルセットを使わない、ローウエストの膝丈ドレスが登場した。その平坦で直線的なシルエットは、ジャポニスムの流行でヨーロッパに渡った着物の裁断法や、三次元を二次元に再構築するキュビスムの影響ともいわれる。また、機能的でシンプルなデザインが好まれたこの時代、衣服の表面からリボンやレース、フリルなど、過剰な装飾がいっさい取り払われた。こうして現われた大きな平面を飾ったのが、単純な線と形から成る幾何学模様や、極端に様式化された花や動物などの具象的モチーフであった。また、20年代にはダンスが大流行するが、その時に着るドレスには、動きに応じて輝きを放つビーズやスパンコールを使った刺繍が全身に施された。アール・デコの再評価が始まった60年代以降、今日に至るまで、多くのデザイナーがこのような20年代のデザインにインスピレーションを受け、アール・デコ風と称するデザインを発表している。
補足情報
参考文献
Cubism and Fashion,Richard Martin(exh.cat.),The Metropolitan Museum of Art,1998
Art Deco Fashion,Suzanne Lussier,Bulfinch,2003
Les années folles 1919-1929(exh.cat.),Musée Galliera,2007
『モードのジャポニスム キモノから生まれたゆとりの美』,京都服飾文化研究財団,1994