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『イコノロジー研究 ルネサンス美術における人文主義の諸テーマ』E・パノフスキー

Studies in Iconology: Humanistic Themes in the Art of the Renaissance, Erwin Panofsky
更新日
2024年03月11日

美術史家エルヴィン・パノフスキー(1892-1968)の主著のひとつ。パノフスキーがアメリカ合衆国に亡命後初めて刊行した著書でもある。同書の初版は1939年だが、62年に出版された同書の改訂版において、パノフスキーは「イコノロジー(図像解釈学)」を「イコノグラフィー(図像学)」という学問から区別すべく次のように述べている。すなわち、美術作品の分析には(1)自然的主題、(2)伝習的主題、(3)内的意味・内容という3つの水準が存在する。第一の水準は線と色からなる形およびその相互関係をある「対象」や「出来事」として認めることであり、これは美術史で言うところの「モチーフ」、すなわち「イコノグラフィー以前の」記述に相当する。第二の水準は、モチーフの組み合わせから「イメージ、物語、寓意」を認識することであり、これが「イコノグラフィー」に相当する。そして第三の水準が、上記のような純粋な形、モチーフ、イメージ、物語、寓意などを象徴的に解釈することに相当する。「象徴的に解釈する」とはつまり、以上のような作品の特質を、国家・時代・階級・宗教・哲学的信条などからなる基礎的態度の徴候として把握するということである。パノフスキーにおいては、ある美術作品からこのような「象徴的価値」(E・カッシーラー)を発見することこそが「イコノロジー」と呼ばれるのである。

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補足情報

参考文献

『イコノロジー研究 ルネサンス美術における人文主義の諸テーマ』,E・パノフスキー(浅野徹ほか訳),ちくま学芸文庫,2002