一木造
- Ichiboku-zukuri
- 更新日
- 2024年03月11日
奈良時代後期から平安時代前期に盛行した日本の木彫仏の制作技法、またはその構造。頭部から体部までの主要部分をひとつの用材から彫り出すことを原則とする。両腕・体側部・両脚部などは別の用材を矧(は)ぎ足してつくる場合もある。干割れを防ぐために、背面などから像の内部をくり(内刳り)、木心を取り除くことも多い。代表的な作品は《神護寺薬師如来立像》、《新薬師寺薬師如来坐像》など。一木造は飛鳥時代には銅造に次いで多く行なわれたが、奈良時代になると塑造、乾漆造が造仏の技法として盛行するようになる。しかし奈良時代後期からは、檀像(檀木を素材とし、一木からつくられる仏像)概念の中国からの移入を背景に、木彫が再興してあらためて一木造が多く行なわれるようになった。しかし平安時代後期には、像の主要部を複数の用材から組み合わせてつくる寄木造が仏師定朝により完成され、一木造にかわって以後の木彫技法の主流となった。一方でその間にも、一木造は東日本での鉈彫(一木彫の表面に丸鑿[まるのみ]の痕を残す技法)の作品など、地方での造像で用いられることがあった。また江戸時代には円空、木喰らが一木彫の仏像を制作した。こうした一木造の展開の基盤には、木を神の依り代とみなして信仰する日本の神木・霊木意識があったと指摘されることもある。
補足情報
参考文献
「仏像 一木にこめられた祈り」展カタログ,東京国立博物館、読売新聞東京本社文化事業部編,読売新聞東京本社,2006
『日本の美術No.202 一木造と寄木造』,西川杏太郎,至文堂,1983
『仏像の事典 仏像の見方・楽しみ方がよくわかる』,熊田由美子監修,成美堂出版,2006