インゼル・ホンブロイヒ美術館
- Museum Insel Hombroich(独)
- 更新日
- 2024年03月11日
1986年、「芸術と自然の並置(Kunst parallel zur Natur)」という方針のもと、ドイツのデュッセルドルフ近郊、ホンブロイヒに設立された美術館。「島(インゼル)」と冠せられている理由は、一帯がいくつもの芸術関連施設(美術館、アトリエ、研究所など)で構成され、外界と隔絶された「芸術の孤島」のようになっているためである。美術館は、不動産業者でコレクターのカール=ハインリヒ・ミュラーが自身のコレクションを公開するために構想された。ミュラーはひとりの作家にひとつの展示空間を与えるというコンセプトを打ち出し、この考えにデュッセルドルフ芸術アカデミーの関係者たちが賛同した。画家のゴットハルト・グラウブナーは、美術史家のキティ・ケムルが学術的見地から監修していたミュラー・コレクションの拡大について提言し、彫刻家エルヴィン・ヘーリッヒは厚紙を使用した彫刻作品を建築空間に転用した。そして、景観建築家ベルンハルト・コルテが敷地にあった荒れた庭園を再生し、また隣接するエルフト川沿いの農地を、元の水辺の草地に作り変える計画を立てた。現在では安藤忠雄などによる新しい建物が見られるが、へーリッヒ設計の建築物が点在するこの湿地体こそ、美術館の核である。作品の展示方法は、美術作品との対話を目的としているため、その妨げとなりうるもの(キャプション、配布資料など)がほとんどない。また、ミュラーは体系的に作品を蒐集せず、嗜好に合わせ購入したため、コレクションはアフリカ、東アジア、南米やオセアニアの美術作品とともに、ポール・セザンヌなどの近代美術作品までも網羅するに至っている。94年、旧NATO軍のロケット発射基地を買い取り、基地にあったホールや防空壕は、アーティストや学者たちの住居およびアトリエ、また研究の場となっている。96年より財団となって、公立美術館として始動している。