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インフク

Инхук(露), INKhUK(英)
更新日
2024年03月11日

「芸術文化研究所」の意。1920年3月、モスクワに設立され、画家、彫刻家、建築家、芸術理論家などがグループを形成して芸術研究を行なった機関。構成主義の拠点となり、教育人民委員会のイゾ(造形芸術局)附属の学術・創作団体として24年まで活動した。初期は画家のワシリー・カンディンスキーがプログラムの構成に中心的な役割を果たした。カンディンスキーは絵画、彫刻、音楽、ダンスといった異なるジャンル間に共通する知覚の法則性や、鑑賞者に対する効果を分析することを試みた。このようなカンディンスキーの心理的、主観的なアプローチに対して内部から批判が生じ、20年11月、アレクサンドル・ロトチェンコらを中心とする芸術家たちが客観分析グループを組織した。客観分析グループは絵画を構成する諸要素に還元し、それらの組み合わせを分析することで科学的な考察を試みた。客観分析グループの志向は現実の素材をいかに組織するかという課題へと発展し、21年2月にはロトチェンコ、ワルワーラ・ステパーノワ、批評家のアレクセイ・ガンらにより、技術や生産を志向する構成主義者第一作業グループが形成された。同年秋にはインフク常任委員会の代表にオシップ・ブリークが就任し、芸術を生産へと移行させようとする生産主義の傾向を強化した。インフクは新しいタイプの専門家の育成を目指し、造形学校ヴフテマス(高等芸術技術工房)と密接な関係にあった。インフクにおける研究成果はヴフテマスの基礎科目のカリキュラムに反映され、ヴフテマスの学生はインフクの作業グループに参加することもあった。

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参考文献

『ロシア・アヴァンギャルド建築』,八束はじめ,INAX出版,1993
『ロシア・アヴァンギャルド4 コンストルクツィヤ 構成主義の展開』,五十殿利治、土肥美夫編,国書刊行会,1991
『ロシア・アヴァンギャルド』,亀山郁夫,岩波新書,1996
『夢見る権利 ロシア・アヴァンギャルド再考』,桑野隆,東京大学出版会,1996
『ロシア・アヴァンギャルド芸術 理論と批評 1902-34年』,J・E・ボウルト編(川端香男里訳),岩波書店,1988
『ロトチェンコとソヴィエト文化の建設』,河村彩,水声社,2014