絵金祭り
- “Ekin” Matsuri
- 更新日
- 2024年03月11日
幕末から明治にかけて高知で活躍した絵師・金蔵(略して絵金)の絵を楽しむ祭り。毎年7月の第3週の土日に、高知の赤岡町で催される。夕暮れから夜にかけて絵金の芝居絵屏風と絵馬提灯が商店の軒先にずらりと並べられ、屋台のほか、ビアガーデンやお化け屋敷も設置され、多くの人で賑わう。絵の題材になっているのはほとんどが歌舞伎狂言の名場面で、生首に血まみれの死体、女の執念や鬼気迫る修羅場など、いかにも劇的な場面が情感深く描かれている。それらが描かれた二曲一双の屏風絵はすべて露出展示されており、また蝋燭の灯りが間近に置かれているため、画中の人物たちがゆらゆらと蠢いているように見える。絵のなかの鮮やかな色彩も祭りの彩りと共振しているようだ。絵金祭りとは、絵と祭りが有機的に結びついた、じつに稀有な事例である。元来、これらの屏風絵はまちの旦那衆が地元の神社に奉納するために絵金らに描かせたことにはじまり、それゆえ今も町の人びとが所有している絵も少なくない。絵金祭りには、近年のアート・プロジェクトが目指しているような、地域とアートの幸福な関係を見出すことができるのである。
補足情報
参考文献
「絵金 土佐の芝居絵と絵師金蔵」展カタログ,高知県立美術館,1996
『絵金』,PARCO出版,2009
『絵金と幕末土佐歴史散歩』(とんぼの本),鍵岡正謹、吉村淑甫,新潮社,1999
『高知絵金ガイドブック2012』,高知県立美術館,2012
『美術手帖』2009年9月号,「絵金祭り 地元で愛され続ける、絵金さんを巡る旅」,山下裕二、天明屋尚,美術出版社