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回顧展

Retrospective
更新日
2024年03月11日

アーティストの一生涯にわたって制作された作品群の全体像を紹介する展覧会を指す。現在に続く回顧展のはじまりは、19世紀頃にあるといって差し支えないだろう。19世紀フランスにおいて、展覧会といえばその主流はサロンなど公的機関によるものであった。1855年に開催された第1回パリ万国博覧会では、政府により新古典主義の巨匠ジャン=オーギュスト=ドミニク・アングルとロマン主義のリーダー、ウジェーヌ・ドラクロワの個展が開催された。一方、これに対抗したギュスターヴ・クールベが万博会場付近で個展を独自開催する。ここに回顧展のルーツの一端を見ることができよう。パリ万博に見られるような公的機関による個展も回顧展のルーツのひとつであるに違いないが、あらゆるアーティストの回顧展が開催されている現在の状況により近いルーツは、後者のクールベのように反発した画家による独自開催の個展が頻繁に開催される流れができたことが大きいだろう。1867年の第2回パリ万国博覧会では、クールベに触発されたエドゥアール・マネが油彩画50点ほどを展示した個展を独自開催し、クールベも再び個展を開催した。現代では、美術史上重要とされるアーティストの充実したコレクションを保有する世界的な美術館が共同で、あらゆる回顧展の企画を実現している。このような大規模回顧展は、そのアーティストに対する研究をより進め、礎を築くきっかけとなっている。

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